現場管理費の計算方法は?自動計算ツールやエクセルでかんたんに算出できる

「現場管理費の計算がうまくいかない…」
「適正な率がわからず見積もりに自信が持てない」

一般的に現場管理費率は純工事費の10~50%程度の範囲で変動しますが、この幅の広さこそが積算担当者を悩ませる要因となっています。

現場ごとのシミュレーションから、すぐに使えるExcelテンプレート、わかりやすい計算式の基本、陥りがちなミスの回避策まで、根拠のある数字を示せるように一つひとつ答えてきます。

現場管理費率の計算ツール

実際の工事現場で現場管理費がどのように算出されるのか、具体的な数値を用いたシミュレーションを試してみましょう

たとえば、工種が「建築新営」、純工事費が「50,000千円」、工期「10ヶ月」を例に取ると、現場管理費率は国土交通省の積算基準に基づいて「19.61%」となります。

現場管理費率パーセント計算
千円
ヶ月
現場管理費率(Jo)

国土交通省「公共建築工事共通費積算基準」(令和7年改定)
※ 実際の計算結果は条件によって異なる場合があります。本計算結果はあくまでも目安としてご利用ください。

現場管理費率が計算できるExcelテンプレート

現場管理費率の計算がExcelやスプレッドシートで簡単にできるテンプレートを用意しました。無料でダウンロードできて、すぐに使えます。

※ 実際の計算結果は条件によって異なる場合があります。Excelテンプレートはあくまでも目安としてご利用ください。

現場管理費率の標準的な計算式

国土交通省が定める現場管理費率の計算式は、次のとおりです。一見複雑に見えますが、数値を当てはめるだけで算出できます。

現場管理費率(Jo) = Exp(a + b × LogeP + c × LogeT)

Nには純工事費を千円単位、Tには工期を数ヶ月単位で入れます。a、b、cは工種で差があるため、以下の表の数値をあてはめます。そのため、工事の種類で現場管理費率のパーセンテージは変動します。

工種リストabc
建築新営5.899-0.4470.831
建築改修7.079-0.5380.773
電気設備新営5.961-0.3870.629
電気設備改修6.038-0.4310.736
機械設備新営4.723-0.2520.428
機械設備改修6.221-0.4610.8
昇降機設備7.438-0.448

国土交通省「公共建築工事共通費積算基準」(令和7年改定)

現場管理費率の上限値と下限値の計算式

現場管理費率には標準的な計算式以外にも、許容される上限と下限の計算式があります。工期に左右されずに、工事の規模のみで設定できます。

現場管理費率(Jo)の上限値 = a × N^c
現場管理費率(Jo)の下限値 = b × N^c

Nには純工事費を入れます。aは工種別の上限値係数、bは工種別の下限値係数、cは工種別のパーセンテージです。また、工種別に純工事費の額によって、計算式がわかれます。

工種1,000万円以下1,000万円超
建築新営10.01~20.13%37.76×P^-0.1442~75.97×P^-0.1442
工種500万円以下500万円超
建築改修12.70~26.86%87.29×P^-0.2263~184.58×P^-0.2263
電気設備新営22.91~38.60%156.07×P^-0.2253~263.03×P^-0.2253
機械設備新営17.14~31.23%90.67×P^-0.1956~165.22×P^-0.1956
工種300万円以下300万円超
電気設備改修17.67~50.37%186.18×P^-0.2941~530.68×P^-0.2941
機械設備改修15.25~42.07%169.65×P^-0.3009~467.95×P^-0.3009

国土交通省「公共建築工事共通費積算基準および公共建築工事標準単価積算基準の改定について」(2011年4月)

現場管理費の計算方法

現場管理費で最も基本となる計算式は、次のとおりです。

現場管理費 = 純工事費 × 現場管理費率 × 各種補正係数
項目詳細
純工事費直接工事費と共通仮設費の合計額。現場で直接的に必要となる費用の総額で、現場管理費算出のベースとなる。
現場管理費率純工事費の規模に応じて、国土交通省や各自治体が定める標準率表から該当する率を選択する。
補正係数工事の特殊性に応じて、地域係数、工期係数、施工条件係数などを乗じて最終的な率を算出する。

1. 純工事費

純工事費とは、建設工事の積算において、「直接工事費」と「共通仮設費」を足した費用です。

項目詳細注意点
直接工事費①材料費(コンクリート、鉄筋、配管材など)
②労務費(職人の賃金、法定福利費など)
③直接経費(機械リース料、特許使用料など)
現場で直接的に工事に関わる費用のみを計上。管理的な費用は含まない。
共通仮設費①仮設事務所、仮設トイレ
②安全設備(手すり、ネットなど)
③環境保全費(騒音・振動対策)
④動力用水光熱費
工事全体で共通して必要となる仮設物や設備に関する費用。

2. 現場管理費率

現場管理費率の標準的な計算式現場管理費率の上限値と下限値の計算式で計算します。現場管理費率の計算ツールを使うと早いです。

また、現場管理費率の大まかな早見表は、次の通りです。

工事規模直接工事費標準的な現場管理費率現場管理費額
小規模工事10,000千円20.0~25.0%200~250万円
中規模工事50,000千円12.0~18.0%600~900万円
大規模工事100,000千円9.0~14.0%900~1,400万円
超大規模工事500,000千円5.0~10.0%2,500~5,000万円

工事規模が大きくなるほど現場管理費率は低下する傾向にあります。これは規模の経済性が働くためで、現場事務所や管理体制などの固定的な費用が工事規模に比例して増加しないことが理由です。

3. 各種補正係数

実際の積算では、このような基本率に加えて、工事場所による補正(市街地係数1.3倍など)、工期による補正(厳冬期施工1.15倍など)、施工条件による補正(夜間工事1.25倍など)を組み合わせて計算します。

たとえば、都心部での夜間工事で純工事費1億円の場合、基本率11.62%に市街地係数1.3と夜間工事係数1.25をかけると、最終的な現場管理費率は18.89%となり、金額にして1,889万円が計上されることになります。

現場管理費の計算でミスするポイント

1. 対象費用の範囲を間違える

現場管理費の計算で最も頻発するミスは、計上すべき費用の範囲を誤って認識してしまうことです。特に現場管理費と一般管理費が曖昧になりやすいため、現場管理費は「特定の工事現場に 直接紐づく費用」、一般管理費は「会社全体の運営に 関わる費用」と分類しましょう。

このような区分を明確にするために、以下の判断基準を設けることが有効です。

質問はいいいえ
その費用が特定の工事現場に直接紐づくか現場管理費一般管理費
工事の進行に伴って発生する費用か現場管理費一般管理費
工事完了後は発生しなくなる費用か現場管理費一般管理費

また、国土交通省の公共工事標準積算基準などで示される、より標準的な現場管理費は次の18項目です。

項目説明
労務管理費現場従業員の募集や、作業の記録など労務管理にかかる費用。
租税公課工事に関わる契約書の印紙税や、固定資産税、自動車税などの税金。
保険料工事保険や賠償責任保険など、工事現場にかける各種保険の費用。
従業員給料手当現場従業員に支払う給料や、残業代・休日出勤手当などの各種手当。
施工図等作成費施工図や完成図などの作成に要する費用。
退職金現場従業員の退職金制度に関する費用。
法定福利費法律で定められた、健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険料。
福利厚生費法律で定められていない、慶弔見舞金やレクリエーション費用など。
事務用品費現場事務所で使用する文房具、コピー用紙、トナーなどの消耗品費。
通信交通費電話代、インターネット料金、切手代、従業員の交通費など。
交際費発注者や協力会社との打ち合わせなど、業務上必要な接待飲食費。
補償費工事中の騒音や振動など、近隣住民への補償に関する費用。
外注経費測量や設計など、専門的な業務を外部に委託した場合の費用。
工事登録等に要する費用建設業許可の申請や更新、経営事項審査などにかかる費用。
動力・用水光熱費現場事務所や仮設施設で使用する電気、水道、ガスなどの費用。
公共事業労務費調査に要する費用国土交通省が実施する調査に対応するための人件費や資料作成費。
安全訓練等に要する費用従業員の安全意識向上のための研修や、安全大会の開催費用など。
雑費上記のいずれにも分類されない、少額で一時的な費用。

国土交通省「公共建築工事共通費積算基準」(令和7年改定)

2. 案件に合わない計算方法を選ぶ

工事の規模や種類を考慮せずに、画一的な計算方法を適用してしまうことも、大きな計算ミスにつながります。

500万円の小規模改修工事と5億円の大規模新築工事では、現場管理費の構造がまったく異なるにもかかわらず、同じ計算式を使用してしまうケースが見受けられます。

比較項目小規模工事(500万円)大規模工事(5億円)
工期短い長い
現場常駐率低い高い
現場管理費率高い低い

このような特性を無視して一律の率を適用すると、採算割れや過大請求といった問題を引き起こしかねないため、適切な計算方法の選択が重要です。

3. 過去の比率をそのまま使う

例えば、働き方改革の推進により、現場の労務管理がより厳格化され、管理工数が増加しています。建設DXの推進に伴い、ICT機器の導入費用やデジタル管理システムの運用コストなど、従来にはなかった費用項目が発生するようになりました。

そのため「前回もこの率で問題なかったから」という理由で、過去の現場管理費率を機械的に適用することは、大きなリスクを伴います。

過去のデータを参考にすることは重要ですが、現在の市場環境、法規制の変更、技術革新の影響などを総合的に評価し、必要に応じて率を調整する柔軟性が求められます。定期的に実績データを分析し、より精度の高い現場管理費率を設定しましょう。

現場管理費の積算を効率化する方法

積算ソフトを導入することで、手作業よりも圧倒的に計算時間が短縮されて、ヒューマンエラーのリスクも低くなります。

現在はAIによる最適な現場管理費率の提案を受けることも可能になってきました。例えば、工事場所の地域特性、季節要因、施工難易度などの複数のパラメータを入力すると、類似条件の過去案件から最適な管理費率を自動算出してくれるシステムも登場しています。

また、BIM(Building Information Modeling)との連携により、3次元モデルから自動的に数量を拾い出し、それに基づいて現場管理費を算出する高度な機能も実用化されています。

活用する技術メリット
積算ソフトウェア計算が高速化され、ヒューマンエラーが削減される。
AIによる最適費率の提案過去の類似案件データ(地域特性、季節、難易度など)を基に、AIが最適な現場管理費率を自動で算出する。
BIMとの連携3Dモデルから自動で数量を算出し、見積もり作成時間を大幅に短縮できる。

このようなデジタル技術の活用により、見積もり作成にかかる時間を従来の半分以下に短縮しながら、精度は格段に向上させることが可能となっています。

プロワン
業務管理システム「プロワン」

プロワンは、建設・設備工事・リフォーム・ビルメンテナンスなどの短・中期工事に特化した業務管理システムです。営業から施工・保守、請求・収支までの工程を1つのプラットフォームでつなぎ、現場起点のデータをリアルタイムに経営判断へ還元します。

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